遺産分割協議書を作るように言われたのですが、決まった書式やテンプレートはあるのでしょうか?書き方を間違えないか不安です。
法律で定められた統一の書式はありませんが、財産の分け方を正確に記載する必要があります。不備があると、銀行や法務局での手続きがスムーズに進まないこともあります。
作成するときは、どんな点に気をつければいいですか?
不動産や預貯金など、財産ごとに誰が相続するのかを明確に記載することが大切です。この記事では、遺産分割協議書の記載例や作成時の注意点、相続税を考慮した財産の分け方について解説します。
この記事の目次
1.遺産分割協議書とは
2.遺産分割協議書はいつまでに作る?期限との関係
3.遺産分割協議書を作成する流れ|5つのステップ
4.遺産分割協議書の書き方と記載例
5.遺産分割協議書が無効になるケースと注意点
6.遺産分割協議書の提出先一覧
7.遺産分割協議書は誰に依頼できる?費用の目安
8.愛媛・松山で遺産分割協議書の作成をお考えの方へ
9.遺産分割協議書に関するよくある質問
10.まとめ
1.遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、亡くなった方(被相続人)の財産を「誰が・何を・どれだけ相続するか」について、相続人全員で話し合って合意した内容を書面にしたものです。
相続人全員が署名し、実印を押して印鑑証明書を添付することで、「この分け方に全員が同意した」ことを第三者に証明できる書類になります。法務局や金融機関は、この書類をもとに不動産の名義変更や預金の払戻しに応じます。
遺産分割協議書が必要なケース
・遺言書がなく、相続人が2人以上いる
・遺言書はあるが、相続人全員の合意で遺言と異なる分け方をする
・遺言書に書かれていない財産がある
・相続税の申告で、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う
一般的な相続では、多くの場合に遺産分割協議書が必要になると考えてよいでしょう。
遺産分割協議書が不要なケース
・相続人が1人しかいない
・遺言書があり、その内容どおりに相続する
・法定相続分どおりに分け、不動産も法定相続分の共有で登記する
ただし、法定相続分どおりの共有は、将来その不動産を売るときに共有者全員の同意が必要になるなど、あとで困ることが多い分け方です。特別な事情がなければ、協議書を作って誰が取得するかを決めておくことをおすすめします。
2.遺産分割協議書はいつまでに作る?期限との関係

遺産分割協議書そのものに、法律上の作成期限はありません。しかし、関連する手続きには期限があり、実質的にはそれに間に合わせる必要があります。
|相続税の申告期限:亡くなった日の翌日から10か月以内
相続税の申告が必要な場合、申告期限までに分割が決まっていないと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使わずに、いったん法定相続分で計算した税額を納めなければなりません。「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後から分割が決まった時点で特例を適用して還付を受けることは可能ですが、一時的に多額の納税が必要になる点は大きな負担です。
|相続登記の期限:不動産の取得を知った日から3年以内
2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく期限内に登記をしないと10万円以下の過料の対象になります。遺産分割で不動産を取得した場合は、分割が成立した日から3年以内に登記が必要です。
実務上は、四十九日を過ぎて相続人が落ち着いた頃から財産調査と話し合いを始め、亡くなってから半年〜8か月程度で協議書をまとめる、というスケジュールが一つの目安になります。
3.遺産分割協議書を作成する流れ|5つのステップ

ステップ1:相続人を確定する
亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集め、法定相続人が誰かを確定します。前の配偶者との間の子や、認知した子など、家族が把握していなかった相続人がいることもあり、一人でも欠けた協議書は無効です。
ステップ2:相続財産を調査し、財産目録を作る
不動産、預貯金、株式、生命保険、自動車、借金などをすべて洗い出します。不動産は登記事項証明書と固定資産税の課税明細書、預貯金は亡くなった日時点の残高証明書で内容を確認し、財産目録にまとめます。財産の記載漏れは、後で協議のやり直しが必要になる原因になります。
ステップ3:相続人全員で遺産分割協議を行う
財産目録をもとに、誰が何を相続するかを話し合います。全員が一堂に会する必要はなく、電話やメール、オンラインでのやり取りでも構いません。ただし、全員が合意することが条件です。相続税がかかる場合は、この段階で「どう分けると税額が最も少なくなるか」を税理士に確認しておくと、後悔のない分割ができます。
ステップ4:遺産分割協議書を作成する
合意した内容を書面にまとめます。書き方は次の章で解説します。
ステップ5:相続人全員が署名・実印で押印し、印鑑証明書を添付する
協議書は相続人の人数分の原本を作成し、それぞれが1通ずつ保管するのが一般的です。全員が署名し実印を押したうえで、各自の印鑑証明書を添付します。相続人が遠方にいる場合は、協議書を郵送で順に回して署名・押印を集めます。
4.遺産分割協議書の書き方と記載例

遺産分割協議書に法定の書式はありません。インターネット上のひな形を参考に、手書きでもパソコンで作成しても構いませんが、内容には最低限盛り込むべき事項があります。
必ず記載する事項
1.被相続人の氏名、死亡日、本籍地、最後の住所
2.相続人全員で遺産分割協議を行い、合意した旨
3.各相続人が取得する財産の内容(財産を特定できる情報)
4.協議の成立日
5.相続人全員の住所・氏名(署名)と実印の押印
財産別の書き方のポイント
|不動産
登記事項証明書に記載されているとおりに書きます。土地は「所在・地番・地目・地積」、建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」です。住所(住居表示)と地番は異なることが多いため、必ず登記事項証明書で確認してください。ここが違っていると法務局で登記が受け付けられません。
|預貯金
「金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号」で特定します。金額は残高が変動するため、書かないか「全額」と記載するのが一般的です。
|株式・投資信託
「証券会社名・支店名・口座番号・銘柄・数量」を記載します。
|自動車
「車名・登録番号・車台番号」で特定します。
|代償分割をする場合
たとえば長男が実家を相続する代わりに、次男へ現金を支払う「代償分割」を行う場合は、「長男は次男に対し、代償金として金〇〇円を令和〇年〇月〇日までに支払う」と明記します。この記載がないと、支払った現金が贈与とみなされて贈与税の対象になるおそれがあります。
|後日判明した財産の扱い
「本協議書に記載のない財産が後日判明した場合は、〇〇が取得する」あるいは「相続人全員で改めて協議する」という条項を入れておくと、協議のやり直しを防げます。
遺産分割協議書の記載例(見本)
|遺産分割協議書
被相続人 愛媛 太郎(令和〇年〇月〇日死亡) 最後の本籍 愛媛県松山市〇〇町〇番地 最後の住所 愛媛県松山市〇〇町〇丁目〇番〇号
上記被相続人の遺産について、共同相続人全員で遺産分割協議を行った結果、次のとおり分割することに合意した。
1.相続人 愛媛花子は、次の財産を取得する。 (1)土地 所在 松山市〇〇町〇丁目 地番 〇番〇 地目 宅地 地積 〇〇〇.〇〇㎡ (2)建物 所在 松山市〇〇町〇丁目〇番地〇 家屋番号 〇番〇 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階 〇〇.〇〇㎡ 2階 〇〇.〇〇㎡
2.相続人 愛媛一郎は、次の財産を取得する。 (1)〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇 の全額
3.本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、相続人 愛媛花子が取得する。
以上のとおり協議が成立したことを証するため、本協議書2通を作成し、各相続人が署名押印のうえ、各自1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
住所 愛媛県松山市〇〇町〇丁目〇番〇号 相続人 愛媛 花子 実印
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 相続人 愛媛 一郎 実印
形式面の注意
・複数ページになる場合は、ページの間に相続人全員の実印で契印を押す
・訂正する場合は、訂正箇所に相続人全員の実印で訂正印を押す(訂正が多い場合は作り直すほうが安全)
・押印は必ず実印を使い、印鑑証明書と印影が一致していることを確認する
5.遺産分割協議書が無効になるケースと注意点

せっかく作った協議書が無効になると、手続きがすべて止まります。特に多い4つのケースを押さえておきましょう。
1. 相続人の一部を除いて協議した
相続人全員の合意がない協議は無効です。戸籍を正確に確認しないまま話し合いを進めると、後から相続人が判明してやり直しになることがあります。
2. 未成年の相続人がいるのに、親が代わりに署名した
親も相続人である場合、親と子の利益が対立するため、親は子の代理人になれません。家庭裁判所で「特別代理人」を選任してもらう必要があります。
3. 認知症などで判断能力のない相続人がいる
判断能力を欠く方の署名・押印は無効です。家庭裁判所で成年後見人を選任し、後見人が協議に参加します。
4. 行方不明の相続人がいる
連絡が取れない相続人がいても、その人を外して協議することはできません。家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらい、その管理人が協議に参加します。
このほか、いったん成立した遺産分割協議を一部の相続人が一方的に取り消すことはできません。全員の合意でやり直すこと自体は可能ですが、税務上は最初の分割で取得した財産を贈与し直したものとして贈与税が課される可能性があります。協議書に署名する前に内容を十分に確認することが大切です。
6.遺産分割協議書の提出先一覧

作成した協議書は、次のような手続きで提出を求められます。原本を確認のうえコピーを取って返してもらえる手続きが多いのですが、金融機関によっては返却されない場合もあるため、相続人の人数分に加えて予備を1通作っておくと安心です。
| 手続き | 提出先 | 併せて必要になる主な書類 |
| 不動産の相続登記 | 法務局 | 戸籍謄本一式、印鑑証明書、固定資産評価証明書 |
| 預貯金の払戻し・名義変更 | 各金融機関 | 戸籍謄本一式、印鑑証明書、相続届 |
| 株式・投資信託の名義変更 | 証券会社 | 戸籍謄本一式、印鑑証明書 |
| 自動車の名義変更 | 運輸支局 | 車検証、印鑑証明書 |
| 相続税の申告 | 税務署 | 申告書、戸籍謄本一式、印鑑証明書(特例適用時) |
| 農地の相続の届出 | 農業委員会 | 登記事項証明書など |
松山市周辺では農地を相続するケースも多いのですが、農地を相続で取得した場合は、農業委員会への届出が必要です(取得を知った日から10か月以内)。相続登記とは別の手続きなので忘れないようにしてください。
7.遺産分割協議書は誰に依頼できる?費用の目安

遺産分割協議書は相続人自身で作成することもできますが、財産が不動産を含む場合や相続人が多い場合は、専門家に任せる方が確実です。依頼先によって対応できる範囲が異なります。
| 依頼先 | 協議書作成 | 特徴 |
| 行政書士 | ○ | 戸籍収集や金融機関の手続きも代行。不動産登記は不可 |
| 司法書士 | ○ | 不動産の相続登記まで一貫して対応 |
| 税理士 | ○ | 相続税申告に伴って作成。税額を考慮した分割の提案ができる |
| 弁護士 | ○ | 相続人同士に争いがある場合の交渉・調停に対応 |
料金は事務所によって異なりますが、協議書の作成だけであれば5万〜10万円程度が一つの目安です。戸籍収集や財産調査、各種手続きの代行を含めると、その分の報酬が加算されます。
なお、相続税の申告が必要な場合や、相続人同士のトラブルを避けたい場合は、税理士を軸に考えることをおすすめします。「どう分けるか」で相続税額が変わるため、協議書の内容が固まってから税理士に相談しても手遅れになることがあるからです。
8.愛媛・松山で遺産分割協議書の作成をお考えの方へ

分け方で相続税は変わります
遺産相続では、同じ財産でも誰が何を取得するかによって相続税額が大きく変わります。たとえば、亡くなった方と同居していた子が実家の土地を相続すれば小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額できますが、別居の子が相続すると要件を満たさず適用できない場合があります。配偶者の取得割合を増やせば今回の相続税は下がりますが、次の相続(二次相続)で税額が膨らむこともあります。
遺産分割協議書は、こうした税金の視点を踏まえたうえで作成するのが理想です。
税理士法人ミチ・ツナグの遺産分割協議書作成サポート
税理士法人ミチ・ツナグには税理士と行政書士が在籍しており、遺産分割協議書の作成を相続手続き・相続税申告と一体でお手伝いしています。
|戸籍収集・財産調査から協議書作成まで一括対応
相続人の確定に必要な戸籍の収集、金融機関の残高証明書の取得、不動産の登記事項証明書の確認など、協議書作成の前提となる調査を手続き専属スタッフが代行します。
|相続税シミュレーションをもとに分割案を提案
複数の分割パターンで相続税額を試算し、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減、二次相続まで考慮した分け方をご提案します。協議の段階から税理士が関わるため、「協議書ができてから税額を計算したら想定より高かった」ということがありません。
|遠方の相続人との書類のやり取りも代行
県外にお住まいの相続人への協議内容の説明、協議書の郵送、署名・押印の回収、印鑑証明書の期限管理まで当事務所が行います。
|協議書を使った手続きも窓口ひとつで
作成した協議書を使った預貯金の払戻し、証券口座の名義変更、相続税申告まで当事務所で完結します。不動産の相続登記は提携司法書士が対応しますので、別の事務所を探していただく必要はありません。
|報酬が明確
遺産分割協議書の作成報酬は55,000円(税込)からで、代償金の算定が必要な場合の報酬も含めてホームページの報酬表で公開しています。
初回のご相談は無料です。必要な準備や手続きの進め方をご案内しますので、お電話、24時間受付のメールフォーム、公式LINEのほか、Zoomでのオンライン相談をご利用ください。
9.遺産分割協議書に関するよくある質問

Q. 相続人が海外に住んでいて印鑑証明書が取れません。
海外在住で日本に住民登録がない方は印鑑証明書を取得できないため、現地の日本領事館で「署名証明(サイン証明)」を取得し、印鑑証明書の代わりに添付します。
Q. 遺産分割協議書はパソコンで作ってもよいですか?
はい。パソコンで作成して構いません。ただし、署名は相続人本人の自筆が望ましく、押印は必ず実印を使ってください。
Q. 借金も遺産分割協議書に書けますか?
相続人の間で「誰が借金を引き継ぐか」を決めて記載することはできます。ただし、債権者に対しては協議書の内容を主張する権利はなく、法定相続分に応じて請求されるのが原則です。借金の負担を変更するには債権者の同意が必要です。
Q. 遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は何が違いますか?
協議証明書は、相続人ごとに1通ずつ作成し、各自が自分の分だけに署名・押印する形式の書類です。相続人が多く、1通の協議書を回覧するのに時間がかかる場合に使われます。全員分が揃えば協議書と同じ効力があります。
Q. 相続人同士で話がまとまりません。どうすればよいですか?
話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。税理士や行政書士は当事者間の交渉を代理できないため、当事務所では提携する弁護士と連携して対応しています。
10.まとめ
遺産分割協議書は、相続人全員の合意を証明し、不動産の相続登記や預貯金の払戻し、相続税申告に欠かせない書類です。作成そのものに期限はありませんが、相続税申告の10か月、相続登記の3年という期限から逆算して進める必要があります。
作成の際は、相続人を戸籍で正確に確定すること、財産を登記事項証明書や残高証明書のとおりに特定すること、全員が実印で押印し印鑑証明書を添付することが基本です。相続人に未成年者や判断能力のない方がいる場合は、家庭裁判所の手続きが必要になります。
そして、相続税がかかる場合は「どう分けるか」が税額を左右します。協議書を作る前に、税理士へ相談するタイミングを逃さないでください。
愛媛県松山市の税理士法人ミチ・ツナグは、税理士と行政書士が在籍する相続専門の税理士法人として、遺産分割協議書の作成から相続手続き、相続税申告までを窓口ひとつでお手伝いしています。松山市はもちろん愛媛県全域、オンラインでは全国からのご相談に対応していますので、お気軽にお問い合わせください。




